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PANORAMA
純喫茶声

純喫茶「声」

PANORAMA, people, shop

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Open Panorama

昨年(2012年)の暮れも押し迫った12月21日、みんなに惜しまれながら閉店した純喫茶「声」である。閉店の噂を札幌情報通のK氏の書き込みで知り、早速、電話をかけると、きっとお店のママさんだろう「金曜日の午後1時半過ぎだったら、もう空いてるだろうから大丈夫だよ」と快い返事をもらった。で、当日、ソワソワと出かけて行ったのである。

実はこの店、その名前から、新宿「ともしび」よろしく店内には歌声でも?なんて、札幌に来てからかなり気になっていた店である。電車通りを通るたび、その強烈な店構え?から、なかなか店のドアを開けることが出来ず、頭の中ではいつも”この小心オヤジっ!”と呟いていた。遂に、念願叶い、なのである。

純喫茶「声」

純喫茶「声」

約束の時間ちょっと前に着き、建物の回りを徘徊し、外観をチェック。そして、心に余裕をもって店のドアを開けた…つもりであった。しかし、入った途端、満員のお客、名物ナポリタンを茹でるすさまじい蒸気、真冬の北海道の暖房の熱気…。メガネは一瞬で曇り、何も見えない状況。あたふたと店主 猪狩和枝さんにご挨拶、とりあえず、ほとぼりが冷めるまで店の角で一服させていただく始末(汗)。

夕方近くなると、閉店を聞いて来たと思われる客、馴染みと思われる客、それぞれが名残惜しそうに店主に挨拶をして帰っていく。そして、店内に、まったり空気が漂い始めた頃、和枝さんは市電の見えるテーブル席にちょこんと座り、話しはじめた。

ハムトーストセット

ハムトーストセット

店を始めたのが、東京オリンピックの年(1964年)、丁度、映画「三丁目の夕日」の時代である。お店の名前「声」は、その昔、稲荷神社の社務所の横に店を出していた占い師に「一声かける、かけられる。声をかけ合ううち、お互いの交流が深まる」と言われ決めた。そしてその「声」の文字が長く伸びているのは、「これはね、声が長息(長生き)できますようにと、ワッハッハ」と笑いながら教えてくれた。

明るく、見るからに面倒見のよさそうなおばちゃんである和枝さんの人柄だろう、多くのお客さんがこの店でその青春時代を過ごしたようだ。それから48年、建物の老朽化に伴う立ち退きで店を畳むこととなったが「みなさんに支えられここまで続けられたことを感謝しています」と。

また、昭和の風景が札幌から姿を消す。もちろん、それを否定してもしょうがない。しかし、今さらではあるが、何か温かく魅力的な空間は、人間がつくり出すものなのだ、と改めて感じさせられたのである。

ところで、
この店「声」は、映画「探偵はBarにいる」(2011年公開)のロケ地でもある。店から帰って早速、原作の小説「バーにかかってきた電話」をネットで注文。内容は、ハードボイルドが似合わないオヤジとしては、最初は難儀したが、読み進むうちに引きこまれ感アリだっだ。しかし、原作では純喫茶「声」の出番がわからない、当然だ。なので、今度はツタヤに行ってDVDを借りて来た。

場面は、映画の中盤(43分付近)、
相棒の髙田(松田龍平)がアーケードゲーム中、主人公の探偵(大泉洋)がシンコーと言う会社に電話をして加藤を呼び出す場面である。二人が窓際の席に向い合って座ってるカットは、なかなかいい雰囲気であった。

そう言えば、電話のシーンで、大泉洋が待ち合わせの目印にと漫画ピンキーを持っていたが、これは後のCG処理らしい。猪狩さんが「普通の漫画持ってたのが映画を観たらピンキーになってるんだもの〜」とこっそり教えてくれた。

蛇足ではあるが、
(ちょっとネタバレもあるので、映画がまだの方はスルーしてね)感想をひとこと。先に原作を読んでいたため、ネタバレ状態で映画を観たわけだが、どー聴いても、主人公に電話で依頼をする女性の声がバレバレの感じなのだ。原作を読まず一緒に観た家族も、あれ、あの人の声じゃない?って言ってるし(汗)ここがミソで最後に盛り上がる原作なので、ちょっと残念だった。

一方、見慣れた風景が映像に出てくるのは不思議な感覚でもあり、そのあたりは楽しめた。まもなく、第二弾が公開らしい。今度は如何だろう?(2012年12月14日撮影)

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