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だるま湯

だるま湯

Open Panorama小樽の花園銀座商店街に在る老舗の銭湯だるま湯である。昭和初期の開業以来、この花園銀座商店街で営業を続けていたが、2009年10月31日で廃業となった。理由はやはり、内風呂の増加による利用客の減少、燃料費の高騰、そして施設の老朽化である。

訪れたのは廃業後の11月4日。ネットの記事で廃業を知り、かなり出遅れ感が強かったが、駄目もとで代表の高村悦子さんに電話をしてみた。高村さんから「ぼちぼち片付けていますが、どうぞ」と快い返事を頂き、急ぎ出かけたのである。

だるま湯

だるま湯

小樽駅から1キロ程だろうか、アーケード街を南下し寿司屋通りを超えた先、花園銀座商店街の通りにだるま湯は在った。建物は三階建で、右に中華料理店、左に本屋がある。古い銭湯と言えば、どうも神社のような宮造り?に煙突のイメージがある自分には、まずはそのユニークな姿に驚きである。二階部分にある装飾を見ると、このビルが、だるま湯を中心としたテナントビルであることを強く感じさせる。

そして、暖簾をくぐり、中を拝見することに。まず目についたのは、天井の装飾や丸い柱。それなりにヒビや汚れが目立っているが、当時はきっとモダンな洋風建築だったに違いない。建物以外の部分、番台、下駄箱、籐の脱衣カゴ等は、自分が幼い頃に通った銭湯のイメージと同じだ。

さらに、浴室に進んでみると、壁面にペンキ絵やタイル絵等も無く、いたってシンプルであった。帰宅後、調べて分ったのだが、銭湯のペンキ絵は、東日本特有のものであり、西日本の銭湯は、浴室の中央に湯船があり、ペンキ絵は無いらしい。その意味からすると、このだるま湯、西日本スタイル?なのだろうか。

代表の高村悦子さん

代表の高村悦子さん

一通り拝見した頃、男湯の脇の階段から、トントントンと音がし、代表の高村さんが二階の自宅から降りてこられた。早速、番台に座って頂きお話を伺った。高村さんが、だるま湯にこられたのが昭和32年。その頃から昭和40年代にかけてこのだるま湯は、多くのお客さんで賑わっていたそうだ。花園銀座商店街に在る飲食店の従業員も、出勤前に利用していたらしい。その当時の花園銀座は大変な盛況ぶりで、お客さんの払ったお金を箱に詰め込む状態だったそうだ。そのお客さんも年々減少し、最近では、夕方、常連のお客さんが帰った後は、がら〜んとした状態が続いていたとのこと。七年前にご主人が亡くなられてからも、従業員の方々となんとか頑張ってきたそうだが、利用客の減少、施設の老朽化、そして燃料の高騰を受けての決断だった。

高村さん、御年76歳となられるが、とても上品でやさしい方であった。常連のお客さんにとって、建物と高村さんが醸し出す空気は、ホッと、くつろぎを感じさせるものであったろう。このスペースの今後についてお伺いすると、いろいろ問い合せはあるようだがまだ未定らしい。そう言えば、吉祥寺では風呂ロックなんて企画も有ったようだ。この空気感を残しつつ、新たなスペースへ発展してくれればと思う。

だるま湯からの帰り、小樽発快速エアポートの中で自分の銭湯の記憶を辿ってみた。自分の銭湯の思い出は少年の頃の函館に有る。親父の転勤で引っ越した家に内風呂が無かったからだ。引っ越す前の埼玉の団地には、小さいながらも内風呂が有った。なので、引っ越して暫くは、銭湯の大きな湯船に、船や潜水艦の模型を持ち込み、楽しんでいたことを憶えている。

だるま湯 入浴者心得

だるま湯 入浴者心得

銭湯には、知らない大人がいっぱいで、中には、ちょっとコワそうな…人もであった。当時、その地域の子供たちは、週に何度かは銭湯に出かけ、時にはおやじさんたちに説教をくらいながら育ったんだと思う。今考えてみると、銭湯って、どっぷりとその地域に根を張ったコミュニティなんだと思える。

地域に根ざした銭湯が廃れる一方で、携帯やインターネットを通じ地域に縛られないコミュニティが広がっている。善し悪しは別として、その違いの一つは、否応無くその空間を共有するのか、心地よい仲間と共有するのか、のようにも感じる。もちろん、はるか昔に遡れば、住む場所や職業すらも選択出来ない濃密なコミュニティもあった訳で、地域に縛られるコミュニティのみが正しいとは思わない。時代によって、コミュニティのあり方はどんどん変化し続けるのだろうし、そう有るべきだとも思う。ただ、どんな時代になろうとも、リアルな世界である家族や地域は存在し続ける訳だから、銭湯のような地域に根ざしたコミュニティは、やはり大切なんだと思う。

【関連情報】
Wikipedia:銭湯
お風呂屋さん的京都案内:銭湯観光ガイド
PingMag:背景絵師の大きなペンキ絵
Wired Vision:銭湯とウォシュレットにみる日本の「ソフトパワー」
風呂ロック

【サイト内関連情報】
子宝湯

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コメント

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  • コメント (4)

    • shikano
    • 2009年 12月 02日

    先日、たまたま地域コミュニティを考えるパネルディスカッションにいってきたばかりです。リアルなコミュニティスペースの必要性はみんな感じてはいるのですが、ソフトやハードにかかるコストや法規制がネックなんですよね。必要なインフラとして法整備をしたり税金を使えればいいのですが。

    それにしても、決して簡単な撮影ではないはずなのにすごいですね。

    • keiji
    • 2009年 12月 02日

    shikanoさん、どーもでゴザル。
    >リアルなコミュニティスペースの必要性はみんな感じてはいるのですが、
    そーですよネ。
    拙者も最初のサイト(稲城)は、ネットと連動して何か面白い事がなんて考えていたのですが、、、力不足でございました。

    >それにしても、決して簡単な
    浴室の中ですかね?
    営業終了後の撮影だったので、湯気でくもる心配は有りませんでした。ただ、熱気?は伝わらないです、ハイ。

    • asda
    • 2010年 10月 29日

    リアルなコミュニティスペースの必要性はみんな感じてはいるのですが、ソフトやハードにかかるコストや法規制がネックなんですよね。必要なインフラとして法整備をしたり税金を使えればいいのですが。
    http://www.uggshotboots.com/

    • keiji
    • 2010年 10月 29日

    asadaさま、コメント有り難うございました。
    最近、特にハコもの?には風当たりが強いので、なかなか難しいんですね、きっと。

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