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霧笛 - 日和山灯台

霧笛 – 日和山灯台

Open Panorama小樽港や石狩湾を一望出来る高台、高島岬に建つ日和山灯台の最後の霧笛である。この日(2010年3月31日)、全国に残っていた5ヶ所の霧信号所(霧笛)が廃止された。「ブォーン、ブォーン」と言うあの独特な響きは、今後聞くことが出来無いのである。

霧笛は、霧や雪等で視界が悪く、灯台の光が船舶に届かない時に鳴る音波標識で、ここ日和山灯台では、1911年(明治44年)に併設された。当初は、圧搾空気を用いたエアーサイレン方式〜ダイヤホーン方式、さらに電磁石を用い金属板を振動させ音を出すダイヤフラムホーン方式へと変わった(小樽海上保安部配布資料参照)。

小樽海上保安部 石川武市次長、バックはダイヤフラムホーン方式の霧信号機

小樽海上保安部 石川武市次長、バックはダイヤフラムホーン方式の霧信号機

近年、日本ではダイヤフラムホーン方式が主流で、エアサイレン方式は唯一、犬吠埼灯台のみであったが、その犬吠埼灯台のエアサイレンも2008年3月に廃止となっている。巨大な蓄音機のスピーカー?のような犬吠埼灯台のエアサイレンに比べ、ここ日和山灯台のダイヤフラムホーンは、巨大な縦長ステレオスピーカーと言った感じだ。その姿より、アナログ装置を象徴?するかのような霧笛も、レーダーやGPS等のハイテク装置の普及によりお役御免となった。

小樽海上保安部 石川武市さん(写真左上)曰く「正直、最後まで管理運用出来てホットしている。無い部品を探して直し、ようやくここまで来たと言う感じです」と。さらに、霧笛にまつわるエピソードを伺った。「初任当時、霧信号機を鳴らす時、重りの力を利用して30秒間隔(5秒発音+25秒無音)で鳴らしていましたが、30分程で重りが降りてしまうため、一旦霧がかかれば晴れるまで、夜中でも寝る暇が有りませんでした」と当時を振り返って話してくださった。

初代 日和山灯台

初代 日和山灯台

この霧笛が消える話を聞いた時、ちょっぴり切ない思いがした。犬の遠吠えでは無いが、そのちょっと悲しげな響きから来るのだろうか?自宅に帰ってきてから、その理由を考えてみた。暫し悩んだ末、こんなことを想像した。もしも、この先数十年経った後に、現在のGPS装置が他の技術に置き換わったとしたら、霧笛と同様寂しい感情が起こるのだろうか?む、、、それはちょっと想像しづらい。考えてみると、当たり前のことであるが、霧笛は人間が直接聞くことの出来る音である一方、衛星からのGPS信号はハイテク装置の手助けが無ければ理解することが出来ない。その辺りが関係しているのか?

そう言えば、灯台内部に入った時、壁に掛けられている初代の日和山灯台の写真(左上)を見て、「喜びも悲しみも幾歳月」を思い出した。厳しい環境下で海の安全を守る灯台守の生活を描いた映画で、この日和山灯台も舞台となった。今では自動化され無人となった灯台も、かつては人力で動いていた。そう考えると霧笛は、灯台守たちの叫び声であったようにも思えてくる。霧笛に哀愁のようなものを感じるのは、そんな理由だったのかもしれない。

↓小樽駅から日和山灯台までの経路

大きな地図で見る

霧笛荘夜話 on iPad

霧笛荘夜話 on iPad

余談ではあるが、「霧笛」が呼び起こす感情について、もう少し知りたくなり、なにかヒントになる小説でも無いか探してみた。そして、読んだのが「霧笛荘夜話」。前回登場した「鉄道員」と同じ浅田次郎の短編小説集である。折角なので今話題のiPad上で読んでみた。がしかし、ペーパークラフト上ではやはり読みにくく、あっさりと諦めることに、当たり前か、、、

小説は、港町の古いアパート「霧笛荘」の住人たちの物語である。物語は、各住人が主役の短編小説として完結しているが、住人同士が隣人として物語に関わっていて、それぞれの物語に登場してくる。物語によって、同一人物が主役、脇役と変化する。それによって、人物の見え方がコロッと変わってしまうところがとても新鮮で面白かった。短編小説集ではあるが、全体に大きな流れを持った短編集で、巻末の解説には「連作短編集」と書かれていた。読み終わって、ジンワリとココロに沁みる小説であった。

読み終えた後、再度「霧笛」について考えてみた。霧笛荘の住人は、それぞれが人生の進路に迷い、まるで霧の中を彷徨いながら現世の境目のようなこの場所にたどり着いた。そんな彼らにとって霧笛は、なにかぼんやりとではあるが、この世につなぎ止めておく最後の命綱のようにも感じられた。嵐の中で霧笛の方角を聞き間違えれば、さらに深みに迷い込むだろうし、耳を澄まし、正確な方角を理解出来れば、迷路から抜け出すことも出来るだろう。霧笛のその切ない響きの底には、何か人のココロをつなぎ止める、そんな波動が含まれているのかもしれない、きっと…。

【関連情報】
Wikipedia:霧信号所
Wikipedia:日和山灯台
Wikipedia:犬吠埼灯台
Wikipedia:喜びも悲しみも幾歳月
Wikipedia:霧笛荘夜話
Youtube:小樽 最後の「霧笛」に別れ
Youtube:航海安全の役目に幕 日和山霧信号所
Youtube:ちあきなおみ / 霧笛

【サイト内関連情報】
panoramas:日和山灯台

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コメント

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  • コメント (4)

    • shikano
    • 2010年 4月 12日

    しみじみしてしまいました。

    最初、名前の読み方を勘違いしていたのですが、ひよりやま、という名前なんですね。なんかなるほどって感じです。犬が吠える岬とかも面白いし。そう考え始めると岬ってネーミングが面白いかも。

    霧笛は街の方でも聞こえたと思うんですが、聞こえると、街の人は、ああ、事故とか起きなきゃいいな、とか、もし起きたら助けに行かなきゃ、とか思ったりしたんじゃないかな。GPSだとそうはならない。
    なんか切ないですね

    • keiji
    • 2010年 4月 12日

    Shikanoさん、どーもです。
    > 霧笛は街の方でも聞こえたと思うんですが、
    夜、布団の中で聞く霧笛は、きっと、いろんな感情を呼び起こしたんでしょうネ。

    ところで、Shikanoさんのコチラ、久々にガーンと来ましたよ。
    http://homepage.mac.com/shikanoyasushi/files/55b8a9f0f6ac9656054c9b182df73861-371.html

    • shikano
    • 2010年 4月 12日

    椿昇展、撮影してきてよかったです。
    正直、現場ではびびってしまって、撮影OKといわれても、こんなもの撮影出来るのか、していいのか、とかいろいろ考えちゃいましたよ。

    • keiji
    • 2010年 4月 12日

    Shikanoさん、ども。
    > 正直、現場ではびびってしまって、
    現物を拝めないものには、貴重なパノラマ体験でございましたヨ。

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